妊娠中〜産後の運動ガイドライン『オススメの運動と危険な運動』

f:id:ryo_72:20190407122505j:plain

女性にとって妊娠・出産は、身体的に大きく変化する期間だと思います。人生で最も大きな変化といっても過言ではないかもしれません。

ひと昔前は「2人分の食事を摂りなさい」と言われていたようですが、近年は見直されており、妊娠前・妊娠中の体重の増加は、高血圧や糖尿病のリスクが高くなると言われています。

そんなこともあり、現在は、妊娠から産後まで、適正体重でいられるよう、運動することを推奨されています。

実際に、妊娠や出産をきっかけに運動を始める方も多く、ブログ内の相談室にも産後についての相談が来ていたため、今回は妊娠中〜産後までのいくつか運動のガイドラインを紹介していきます。

自宅で行う方はもちろん、トレーナーやインストラクターに依頼する際も、自分で知っておくとより安心です。

 

*ここで紹介するのは、あくまでガイドラインであり、実際に運動を始めるときには医師へ相談してからスタートさせてください。

 

 

妊娠中の運動ガイドライン

妊娠中の運動において注意すべきルールは大きく3つあります。

  1. 特別な合併症のない妊婦は1日に30分以上の運動を週に数回行う
  2. 1回の運動時間は『60分以内』
  3. 強度は『ややきつい以下』

 

ACOG(米国産婦人科学会)では、『特別な合併症のない妊婦は1日に30分以上の運動を週に数回行う』ことが推奨されています。

1回の運動時間は『60分以内』で、強度は『ややきつい以下』

少しつらいかな〜、と感じる強度が上限なので、呼吸が激しくなるような運動は必要ありません。会話しながら行えるくらいの余裕を持ってできる運動を選びましょう。

妊娠中に行う有酸素運動の適切な心拍数は、年齢によって目安を設定されています。 

  • 20歳未満:140~155回/分
  • 20~29歳:135~150回/分
  • 30~39歳:130~145回/分
  • 40歳以上:125~140回/分

この強度を目安としていますが、この運動強度を超えると、必ず胎児に悪影響が出るわけではないため、神経質にならず、楽しんで長く続けられるのもを探してみて下さい。

また、妊娠中の運動は合併症の予防効果が語られることがありますが、合併症の予防効果としては証拠が乏しい、とされています。

運動する時間は厳密に決まっていませんが、JISS(国立スポーツ科学センター)では、子宮収縮が起こりにくいとされる午前10時から午後2時を目安にトレーニングが行われています。

 

推奨される運動と禁止される運動

運動を選ぶ際のルールは大きく4つあります。

  1. 有酸素運動、かつ全身運動で楽しく長続きするもの
  2. 妊娠前から行っているスポーツは中止する必要はないが、運動強度は制限する
  3. 競技性が高いもの、腹部に圧迫が加わるもの、瞬発性のもの、転倒の危険があるのも、相手と接触があるものは避ける
  4. 妊娠16週以降では、仰臥位になる運動は避ける 

 

大きく4つのルールをあげましたが、もし妊娠前まで行っていたスポーツや運動があれば、無理に中止する必要はありません。ただし、必ず強度などは調整が必要です。

妊娠中の運動については、好ましいスポーツと好ましくないスポーツ、危険なスポーツと分けられています。

f:id:ryo_72:20190408222430p:plain

産婦人科診療ガイドライン 116P(表1)妊娠中のスポーツより筆者作成

推奨される運動としては、ウォーキングや水泳、ジョギング、エアロビクスなどの有酸素運動があげられます。水泳は、胎児異常を増加させることなく、早産率や先天奇形を軽減させる効果が報告されています。

有酸素運動は、妊娠中だけでなく、産後、授乳中なども推奨されており、胎児や乳児への影響なく、心血管系の健康が改善されると報告されています。

反対に避けるべき・禁止される運動は、転倒などの危険があるアンバランスな種目や人と接触する種目、競技性の高い種目は禁止されています。

これらの条件を含む運動は強度を調整するのではなく、中止を検討しましょう。

例えば、妊婦中によく行われている水泳でも、タイムを争うような運動はするべきではない、とされています。また、腹部に圧迫が加わるものや瞬発性の運動についても避ける必要があります。

高強度なウエイトトレーニングなどは腹圧が高まるため、避けるべき種目となります。

有酸素運動が推奨されていますが、妊娠によって起こりやすい腰痛の予防には筋力トレーニングが効果的です。腹部と背部を中心的に強化することで、リスクを最小限に抑えることができます。妊娠前から行うとより効果的です。

  

妊娠中の運動を禁止される疾患

妊娠中の運動を禁止される疾患があります。

重篤な心疾患・呼吸器疾患、切迫流産・早産、子宮頸管無力症、頸管長短縮、前期破水、性器出血、前置胎盤、低置胎盤妊娠高血圧症候群、など。

 

ここに記載があるのもが全てではないため、疾患がある方は医師へ相談の上、運動の許可を得てからスタートさせて下さい。

 

妊娠中に禁止される姿勢

妊娠中は、仰向け(仰臥位)や立位を長時間保持するような姿勢は避けるべき、とされています。

妊娠が進行するにつれ増大する子宮は、仰臥位になると腹部大動脈や下大静脈を圧迫するようになります。 とくに静脈は圧迫されやすく、その結果、下肢の静脈還流が悪くなり低血圧になる”仰臥位低血圧症候群”は注意が必要です。

とくに妊娠末期ほど起こりやすく、子宮が増大する妊娠 16 週頃よりその可能性があるとされるため、妊娠末期には姿勢にも注意しましょう。

ただし、水泳では浮力が働くため、仰臥位で泳ぐ背泳でも静脈の圧迫は起こりません。

f:id:ryo_72:20190408223342p:plain

仰臥位低血圧症候群の対処法

また、仰臥位で低血圧になってしまったときは、すぐに左側を下にした側臥位をとることにより静脈の圧迫を改善することができます。

そのほかにも、運動中や運動後に何らかの症状があれば、すぐに運動を中止し、必要に応じて医師に連絡して頂きたいと思います。

 

 

ここからは産後の運動についてです。

妊娠中に比べ、禁止事項などは少ないものの、出産の特性を考慮した運動やそれに伴うガイドラインが設定されています。

 

 

産後の運動ガイドライン

産後に行う運動のルールは大きく4つあります。 

  1. 有酸素運動は中強度で『1日20~30分/週150分』
  2. 筋力トレーニングは『週2回1日20〜30分間』
  3. 骨盤底筋群のトレーニング『ケーゲル体操』

 

運動の開始は出産から6週以降ほどと言われています。

ACOG(米国産婦人科学会)では産後『中強度の有酸素運動を週150分行う』ことを推奨しています。この”中強度の有酸素運動”は会話ができるくらいの強度で、大きく心拍数が上がるような種目は適切とは言えません。

筋力トレーニングは『週2回1日20〜30分間』とされ、メインとなる部位は腹部や背部などの体幹部の筋群。また、産後には出産でダメージを受けた骨盤底筋群のトレーニン『ケーゲル体操』なども推奨されます。

産後に関しても高強度な筋力トレーニングや腹部へ大きな圧力がかかるような運動は避けるべき、と考えられています。

 

ケーゲル体操って何?

ケーゲル体操は骨盤底筋群のトレーニングで、産後だけでなく、尿もれ予防などとしても行われます。あまり聞き馴染みのない筋肉だと思うので、この筋肉について少しだけ触れていきます。

f:id:ryo_72:20190407183709j:plain

その名称通り、骨盤の底に位置する複数の筋肉の総称です。

長時間座っているとお尻が痛くなりますが、その時に痛くなる左右の坐骨結節。ちょうど、その間に位置しており、ハンモックのように内臓を支える働きをしています。

この骨盤底筋群は、妊娠時は大きくなった腹部を支え、出産時はいきみなどでも作用します。

出産後、骨盤のゆがみなどが指摘されますが、骨盤に付着する骨盤底筋群もダメージを受け、緩みが生じます。骨盤底筋群の緩みや弱化は尿漏れなどのトラブルの原因になるため、産後はとくに推奨される運動です。

ケーゲル体操の方法

ここからトレーニングの方法を見ていきます。

骨盤底筋群は、付着している位置関係上、ダンベルなどによって負荷をかけることが不可能のため、膣や肛門を締める動作でトレーニングしていきます。姿勢はとくに決まりはなく、 仰向けや立位、座位などで『膣や肛門を5〜15秒ほど締め続ける→リラックス』これを10回繰り返し、1日で複数回(3~10回)トレーニングを行います。

文章では分かりにくいと思うので、こちらの動画を参考に行ってみて下さい。

<医師監修 >尿もれ対策に!骨盤底筋トレーニング【チャームナップ】 - YouTube

 

 

まとめ

今回は、 妊娠中〜産後の運動ガイドラインについてでした。妊娠や出産は大きな変化な時期ではありますが、長期的なQOLを意識しながら楽しく過ごして頂きたいと思います。

 

正直、男性の僕からすると妊娠中や産後の体がどんな状態なのか全く分かりません。

通常のトレーニングや食事などは自分でも経験できるので、実体験を含めたサポートができますが、妊娠・出産は経験することはできないため、こういった客観的なガイドラインをベースに、お客様から話を聞きながら進めるしかありません。

最初に「自宅で行う方はもちろん、トレーナーやインストラクターに依頼する際も、自分で知っておくとより安心です。」と書きましたが、実際に妊娠中や産後を考慮せずに、トレーニングを行い、トレーナーとトラブルになった、という方からご依頼が来たことがありました。

だからといって、今回の内容をすべて覚える必要はないですが「強度は下げて行わないといけないんだな〜」くらいは、頭の片隅に入れておいて欲しいなと思います。

 

長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!

少しでも参考になっていると嬉しいです。

 

*参考資料

1)産婦人科診療ガイドライン

2)臨床スポーツ医学会 妊娠スポーツの安全管理基準

3)産前産後の女性のためのエクササイズガイドライン 

4)国立スポーツ科学センター 妊娠期について