アナボリックステロイドを摂取したら人はこうなる。

 ベンジョンソンの出演CMが話題に

このCMの賛否が話題になっており、オーストラリアのアンチドーピング協会は公式サイト上で

  

「この広告は、ドーピングの使用を軽視しスポーツ界ではドーピングの使用が普通だとする間違ったメッセージを送っている。清廉潔白なアスリートやその環境を守る人たちを誹謗するものだ」

と、抗議する声明まで発表されています。

 


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このCMがどこまで影響があるのかは疑問ですが、アンチドーピング協会はドーピングは悪だと呼びかけなければいけないので、普通に仕事をしただけなのでしょう。

 

 

ベン・ジョンソンのドーピングで世界は大きく変わった。

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 個人的にはベン・ジョンソンのドーピングは多くのスポーツの競技力を高める作用があったと思います。

 ベン・ジョンソンがドーピングをしたソウル五輪以前、1980年代は『筋肉は動作を遅くする』という風潮が強く、筋力トレーニングを積極的に行っている選手自体が少なかったようで、今のようにムキムキの選手はかなり稀な状況でした。

 そんな時代にベン・ジョンソンはアナボリックステロイド(筋肉増強剤)を使用し、100m9.79秒という記録を叩き出し、当時伝説とまで言われました。

 画像を見て分かるように筋肉の大きさが他の選手とは明らかに違います。

 このことがきっかけで世界的に『ムキムキの方が速くない?』と気付き始め、結果的にベン・ジョンソンはドーピングによって筋力も重要な競技力になると分かりやすく証明したことになったのです。現在の世界記録はウサイン・ボルト選手の9.58秒。当時伝説と言われた100m9.79秒という記録も現在では伝説でもありません。

 もし、競技を行っているすべての人が清廉潔白で競技力を科学で向上させる研究がなされなければ、今の競技力はなかったのかもしれません。

 

 ベン・ジョンソンのニュースについてはここまでなのですが、せっかく怪しげな「アナボリックステロイド」の話が出たので少しだけ触れたいと思います。

 

 

アナボリックステロイドの使用は人の体をどう変化させるのか?

 これを読んでいる方の中で、アナボリックステロイドを使用している方は少ないと思いますが、実際アナボリックステロイドを使用したら人はどう変わるのかでしょうか。

 

 その前に、この記事はアナボリックステロイドを推奨していません。ご理解いただいてから読み進めください。

 

 そもそもは、胃腸などの術後、長期間、食事が摂れない患者や寝たきりの患者の筋萎縮を予防するためのものですが、筋肉増強としての使用が印象として強くあります。

 そこで筋肥大を目的としたときに考えられる作用と副作用を考えてみます。(ここから、”ステロイド”に統一して書いていきます)

 

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アナボリックステロイドの作用と副作用


作用:「筋肉量の急速な増加」

 最も特徴的な作用は筋肉量の増加することでしょう。

 この増加速度と増加量は、使用量に直接関係しているといわれています。大量使用者では1ヶ月に数kgも除脂肪体重が増えることもある。(もともとは、筋萎縮を防ぐものなので、ステロイドを使用してもすべての人の筋肉が急激に大きくなるわけではありません。)

 この作用の副産物として脂肪燃焼効果があります。つまり、激しい食事制限などをしなくても腹筋が1年を通して常にバキバキに割れていることが可能ということです。

 ステロイドを使用している選手は、高強度のトレーニングをよりこなせることも示唆されています。除脂肪体重の増加とハードワークの相乗効果でもあるようです。

 

副作用:「男性が女性に、女性が男性に?」ほか多数...

 作用同様、副作用も使用量で大きく異なります。心理的影響は家族や身近な関係者によって気づかれることもあるようです。

 男女共に共通して見られるのが、ニキビ(ざ瘡)の増加です。

 また、男性ホルモン(テストステロン)が増えることに比例して女性ホルモン(エストロゲン)も増え、男性が女性化、その反対に女性が男性化してしまう、ともいわれています。

 具体的には、男性で女性乳房化や精巣萎縮、妊孕性低下など、女性は脱毛症、乳房の減少、陰核肥大、男性型多毛症、膣粘膜の萎縮、月経の停止、声が低くなる、など。

 必ずしもすべての症状が起きるというわけではありませんが、男性の女性化乳房は不可逆的になる可能性もある、と指摘されています。

 肝臓への負担が大きいので定期的に血液検査を行う必要がありますし、これらの副作用を防ぐ薬も加えて摂取することで、必然的に投与量が多くなってしまいます。また、経口経路を変えることもあるようです。

 アスリートの場合、ある一定期間ステロイドを使用し、一時中断、また再開、というサイクルを組み、1年に数回行うこともある。一時中断をすることで、有害な作用を低減すると示唆されています。

 

 ここまで作用と副作用についてまとめましたが、どうしても副作用への記述が多くなってしまいます。次にステロイドで起きる副作用の画像を見ながら紹介します。

 

 

かっこいいカラダを目指していたはずが...

 カラダには見た目以上に数多くの筋肉があります。なので「胸と背中だけ、筋肥大させる」みたいに、都合良くかっこいい筋肉だけ大きくできる訳ではないのです。

 筋肉で作られている、内臓や血管、心臓などにも影響してきます。

 

心臓が大きくなる

 心臓内の容量が小さくなるので、一回拍出量(一回で送ることのできる血液量)が少なくなります。これにより心拍数が上がりやすく、心不全のリスクが高くなります。

 実際、アスリートが競技中やオフシーズンに心臓疾患で死亡した例もあります。血圧の上昇やLDLコレステロールの増加、HDLコレステロールの低下で、誘発し、その状態で有酸素運動を行えば、心肥大のリスクは高まります。

 そのため、ランニングやスクワットなど心拍数や血圧が上がるものは、非常に危険です。

 

血管や内臓への影響

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 筋肉好きな方は、体脂肪が落ちたときに見える血管に魅力を感じるという人もいますが、アナボリックステロイドではその血管も太くなります。(血管も筋肉なので)

 まさに絵に描いたようなバキバキの血管ですが、これは魅力的と言えるのか。

 右の画像では、明らかに腹部が出ているのに腹直筋が6つに割れています。これは腹直筋の肥大でも、脂肪の蓄積で腹部が出ているのでもなく、内臓肥大が起きて腹部が出てしまっています。(※内臓肥大はヒト成長ホルモンを使用した際に起こりやすい症状です。)

 

 これらが、当事者にとって作用なのか副作用なのかは疑問ですが「筋肉増強剤」のイメージが強いステロイドで、人の体はここまで変わってしまいます。

 

 

見分けるにはどうしたらいいのか

 「あの人は使っている」とか「あの人は使ってない」みたいな話もよく聞きますが、記事内で紹介した画像ほど、見た目が変わっていれば「使用している」と判断できますが、使用量や程度によってはナチュラル(薬物の使用なし)と区別がつかないこともあります。分かる方は、筋肥大の速度や男性ホルモンの受容体が多い部位(僧帽筋三角筋)のサイズで、気づかれるようです。

 検査では、基本的に尿から検出しています。ステロイド代謝物は中止後、最大で半年ほどは検出可能なようです。しかし、内因性か外因性かは識別できないため、テストステロンとエピテストステロンの比率で、特定するようです。

 

 

アナボリックステロイドの恩恵は10年続く?

 ステロイドの作用は一時的なもののように見えるかもしれませんが、ステロイドを多量に使用すると、筋繊維の中の核の数が増え、その状態はステロイドを中止し、筋萎縮した後もしばらく続くと考えられています。*1(マウス実験ですが、人間では10年ほど続く可能性もあるとされる)

 核は、筋線維が細くなった後(筋トレをやめて)も、筋肥大した記憶が残ると考えられており、そこから筋トレを再開すれば、通常よりも早く筋肥大が起こります。

 

 つまり、ドーピング検査で陰性でも、「核」という形で、10年前のステロイドの恩恵を受け続けているかもしれないのです。

 

 そのため、1度ステロイドに手を出したら、中止後、10年間ほどは、完全に陰性とは言えなくなってしまいます。

 

 

証拠も副作用もない「遺伝子ドーピング

 筋肉増強剤として有名なアナボリックステロイドですが、副作用もあり、ドーピング検査をすれば、証拠が出る。しかし、現在、ドーピング問題で最も危惧されているのが、「遺伝子ドーピング」です。

 筋トレをすると、筋線維から筋肥大を促す”IGF-Ⅰ”という物質が分泌されます。本来、遺伝子治療で注目されるIGF-Ⅰですが、ドーピングでの悪用が懸念されています。

 

 このIGF-Ⅰの遺伝子を筋肉に注射すると、トレーニングをしなくても猛烈に筋肥大が起き、筋力も上昇する。そして、このIGF-Ⅰは血中に証拠は残らず、尿からの検出もできない、それに加え、副作用もない。(サルを使った実験で同様の結果になっている)

 

 ゲスな言い方になりますが、完全犯罪になるわけです。

 

 もし、このドーピングを行う選手が出てきてしまったら、僕たちが今楽しんでいる競技スポーツは成り立たたなくなってしまいます。

 

 

まとめ

 少しだけと前置きしていながら、長々と書いてしまいました。はじめに書いたように、僕自身はアナボリックステロイド遺伝子ドーピングを推奨していません。しかし、競技によっては、こういったドーピングチェックのない大会もあるようなので、その大会に限っては、事実上「使用を認めている」ということなのでしょう。

 一般の僕たちからすれば、競技力のためにドーピングをしたくなる感覚はあまり理解できませんが、アスリートにとっては僕たちの物差しでは測りきれないほど、大きなもののようです。競技を行っていない方が使用するケースも多いようです。*2

 ドーピングは体の負担だけでなく、経済的負担も大きいです。ドーピングに悩む前に有能なトレーナーやコーチを探した方が、競技人生だけでなく、引退後の人生も豊かにしてくれることでしょう。

 

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