筋肉で動きは遅くなる!?アスリートの”筋トレ”と”筋肉の質”について考えた

平昌オリンピックが開幕し、ウインタースポーツが盛り上がりを見せています。

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そこで今回注目したいのは、アスリートたちの”筋肉”。

 

「アスリートの筋肉=機能的で使える筋肉」

高い身体能力と競技力を兼ね備えたアスリートの筋肉は非常に神秘的なイメージを持つ一方、筋肉の美しさを競うボディビルダーは見た目だけの筋肉『見せ筋』などと言われていたりします。

同じ筋肉でもなぜここまでマイナスイメージになるのか。

 

それはイメージ先行の思考から派生して、さまざまな誤解がされているように思います。今回は、そんな”筋肉”を軸に、アスリートの筋肉と筋トレについて考えていきます。

 

 

筋肉の質に違いはあるのか

 

・格闘技やサッカー選手などの筋肉 → 機能的で質の高い筋肉『使える筋肉』

・ボディビルダーの筋肉 → 大きいだけで、質の低い筋肉『見せ筋(使えない筋肉)』

 

こんな感じで”質”という曖昧な言葉を使い、あたかも筋肉に差があるような表現をされることがありますが、実際、筋肉の質に全く違いはありません。

最初に筋力の差を見ていきます。

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哺乳類の筋肉は1㎠(横断面積)あたり5〜6kgほどの力を発揮できます。

これは性別や人種で変わることはなく、一般の方もサッカー選手もボディビルダーも1㎠あたりの筋肉が出せる力は同じです。

 

他に筋肉の質として考えられるのは、遅筋線維と速筋線維の割合です。 

それぞれ収縮の速度が違う筋肉で、速筋は名前の通り収縮速度が速く、持久力に乏しい。対して、遅筋は収縮速度は遅いが、持久力に優れるという特徴があります。

平均的には5:5くらいで構成されていますが、遅筋線維と速筋線維の割合には個人差があり、後天的に変化もしていきます(速筋→遅筋)。

しかし、筋肉の割合に関係なくトレーニングをして大きくなるのは速筋線維なので、筋トレをしてついた筋肉そのものに質の違いはありません。

 

「筋肉を大きくするとスピードが落ちる!」という嘘

信じられないことに、筋肉をつけると、スピードが遅くなるというイメージがまだあります。基本的には、筋肉が大きくなるほど、筋力がつき、筋力が上がるほど、スピードも上がるので、筋肉の影響で動きが遅くなることはありません。(F=ma)

しかし「体重が増える=動くが鈍くなる」という感覚は完全に間違いとも言えません。

筋肉の付きすぎで動作が遅くなることは十分あり得ます。

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動作が遅くなる原因の1つに、鍛える部位のミスがあります。

そのミスを集結させたボディデザインが「ポパイ」です。

画像を見て分かるように、ポパイは体幹部に比べて、足や手などの末端が太く・重くなっています。この体では、素早く動くスポーツは不利になります。

それに対し、スピードを失わない筋肉の付き方をしているのが「範馬刃牙」です。

体幹部に大きな筋肉がしっかりと付いており、末端いかけて細くなっている。この体は、慣性モーメントが小さくなり、より速く動くことができます。

 

現実的に考えると、両者とも異次元な体つきですが......

アスリートの筋トレを考えた場合、体幹部から離れた部位(ふくらはぎ、前腕など)はあまり重くせず、体幹部に筋肉をつけた方が、より使いやすく、動きやすい体になるでしょう。

 

次にスポーツと筋トレの動作を比較してみます。

 

スポーツと筋トレの動作の違い

スポーツと筋トレは同じカテゴリーのようでいて、その動作には大きな違いがあります。

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筋トレは【同じ動作の繰り返し、動きが遅い、フォームを決めて固める、動きが単純、ずっと力みっぱなし】など、スポーツ動作とは動作特異的に見ても全く違います。

この中で一番大きな差は「反動」です。

筋トレは筋肉に強い負荷をかけることを目的に行うので、非効率的な動作が多く、反動を使わずに行います。(テクニックとして反動を使うものもある)対して、スポーツでは効率よく力を発揮する必要があるため、全身の反動を使って行います。

このように筋トレとスポーツでは動作の差があるため、筋トレの動作が癖になってしまうと、スポーツでは足を引っ張る原因になります。

 

マッチョなのにスポーツが苦手な人がいるのはこのためです。

 

また、スポーツは筋肉の機能だけで行うものではなく、競技の特性に合わせて、筋肉を操縦するスキル(脳・神経など)が必要です。

例えば、僕がいま世界で一番速い車を持っているとします。

その車のエンジンや車体がどれだけ完璧でも、僕はその車(筋肉)を乗りこなす技術(脳・神経)がないので、F1レーサーのように速く走ることは不可能です。

 

このようなことが筋肉でも起こります。

 

どれだけ大きな筋肉を持っていても、使う練習をしなければ、うまく使いこなすことはできません。筋肉そのものに問題があるのではなく、筋肉を扱っている人のスキルに問題があるのです。

 

見せ筋といわれる使えない筋肉が実際に存在するわけではなく「うまく筋肉を使えていないだけ」ということです。

 

筋トレは諸刃の剣である

「筋トレが競技力の足を引っ張ることがある」という話をしてきましたが、筋トレそのものが足を引っ張っているわけではありません。

実際、筋肉が大きくて競技力が低い人というのは、筋トレをしている人に多いのではなく、筋トレしかしていない人に多いのです。

【筋トレ>競技的なトレーニング】になっていると筋トレ動作の癖も残りやすく、競技的な動作の特徴である、反動や脱力といった動きに影響が出てきてしまいます。

だからといって、筋トレとスキル練習が混在しているようなトレーニングでは、両者とも中途半端なトレーニングになるので、やはりスキル練習と筋トレは完全に分けて行うべきでしょう。

 

筋肉が大きく・強くなることでスピードが上がることは、間違いありません。競技をしていく上で筋肉は、非常に重要な武器にもなってくれます。

しかし、筋肉や筋トレは、使い方を間違えると大きなマイナスになる恐れがあるのです。

 

まとめ

今回はアスリートの筋肉と筋トレを軸に書いてきましたが、動きやすい体という点では、アスリートではない、僕たちも基本的には同じようなことが言えます。

現在行われている平昌オリンピックに出場している選手たちの高いパフォーマンスも”センス”という一言で片付けられるものではなく、合理的なトレーニングの上に、構築された力なのです。

 

使える筋肉・使えない筋肉 理論編―筋トレでつけた筋肉は本当に「使えない」のか?

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