「ぽっちゃり体型の人の方が長生き」といわれるカラクリ

トレーナーをしていて一番多く聞くのは「痩せたい!」という相談。

相談してくる人の中には、肥満気味の方もいますが、もうすでに標準体重を下回っている人も意外と多くいるんです。”痩せ至上主義”とでもいうのか、痩せている方が見た目も綺麗で体にもいいという空気がやはり強いのでしょう。

しかし、見た目はともかく、体にいいかは少し考え直さなくてはいけません。

 

今回は「痩せすぎ」をキーワードに、BMI(体格指数)から見る体にいい体型について考えていきます。

 

 

日本人は痩せるべきほどの肥満なのか

はじめに、現在の日本人の体型をみてみます。

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日本人の肥満率(左:男性、右:女性)

平成28年国民健康・栄養調査報告(結果の概要)/厚生労働省

これは、20歳以上の男女を対象に肥満率(BMI≧25以上)を調査したものです。

男性に比べ女性の肥満率がかなり低く出ていますが、これにはBMIの算出方法も影響していると考えられます。

身長と体重から算出されるBMIは筋肉量が考慮されないため、筋肉量の多い男性もBMIの数値が「肥満」として出てしまうのです。

実際にWHO(世界保健機関)の指標でも、1度肥満(BMI25≦30)は「医学的に減量を要する状態とは限らない」としています。

必ずしも、このBMIの数値が正確とは言えませんが、若い世代、とくに女性で減量が必要なほどの肥満の方は、かなり少ないでしょう。

 

次に他の国との比較も見てみます。

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世界のBMI平均値

この図は、WHOが20歳以上を対象に1975〜2016年まで行った調査をマップにしたもので、高い値ほど濃く表示されています。(WHO | Overweight and obesity

日本のBMIの平均の値は「22.7 」と2番目に低い値になっています。

肥満の割合では、日本の1度肥満以上(BMI ≧ 25)の割合は27.2%ですが、2度肥満以上(BMI≧30)の割合では4.3%と大きく減少しています。

 

この調査を見るとOECD諸国の中で、日本は男女ともにBMIが最も低く、世界的に見ても痩せ型の国と言えます(とくに女性)。

 

しかし、BMIが標準値内に収まっていても安心はできません。

BMIは低くても死亡リスクが高くなることが分かっています。

 

痩せ型の方が死亡リスクが高い

肥満や生活習慣病の予防が注目されている一方で、BMI(体格指数)が平均値より少し高い人の方が長生きするといわれることがあります。

実際、体型による死亡リスクの研究報告で「痩せ型の方が死亡リスクが高まる」という研究があります。

この研究で基準にしたのは「体重kg ÷ (身長m×身長m)」で算出されるBMI(体格指数)という指標です。この数値が高いほど肥満ということになります。

その結果、BMIの数値が約22〜23の人が最も病気になりにくく、死亡率が低いというのです。また、この数値から離れるほど、死亡率が高くなるとされており、痩せ型も肥満と同様にリスクがあるとしています。

 

肥満は高血圧や動脈硬化、一部のガンの発症にも関与するとされていますが、肥満については、ここで詳しく説明するまでもないでしょう。

 

問題は痩せ型の人の死亡リスクについて。

国立がん研究センターの研究では「痩せ型の男性ほど、死亡リスクが上昇し、ガンになるリスクがとくに高まる」という報告があります。(Journal of Epidemiology 2011年21巻417-430ページ

BMIが低い(痩せ型)場合、低栄養や免疫力の低下に陥りやすいため、その影響という考え方もできます。ただし、この報告では、BMIの違いによる女性のがん発症率に有意な差は見られていません。

 

BMIが少し高い人が長生きするというカラクリ

これらの報告から「BMIが少し高めのちょっとメタボくらいの人が健康的だ。」という話をされることがありますが、ここで思い出して欲しいのはBMIは筋肉量を考慮していないということ。

「体重kg ÷ (身長m×身長m)」で算出されるBMIは、筋肉量を含まないため、BMIが少し高めの人には、除脂肪体重(脂肪以外の体重)が多い人も含まれてます。

除脂肪体重の多い人(脂肪が少なく、筋肉量がある)は、肥満でもなく、合併症のリスクもない、もちろん低栄養でもありません。

つまり、この除脂肪体重の多い人が最も健康的なタイプなのです。

 

BMI高めの人というのは「ちょっとメタボな人」ではなく「除脂肪体重が多い人」と認識するべきで、体重を落とす以上に除脂肪体重を増やすことが、健康的な体型に近づく手段になるでしょう。

 

まとめ 

「痩せすぎも肥満と同じようにリスクがある」という話をしてきましたが、これだけカロリーで溢れる現代人が日常生活の中で、筋肉量を落とさず、スタイルをキープし続けるのは、ジムに通うかスポーツでもしない限り、難しいと思います。

”美容体重”や”シンデレラ体重”という言葉もありますが、この数値を鵜呑みにして減量していくと、ただの低体重になります。肥満やその他の疾患などがないのであれば、無理なダイエットはすべきではありません。

 

肥満でもないのに痩せを追い求めている思考こそ最も危険なことです。