大谷翔平選手の投球動作から”SSC”(瞬発力)と投球のポイントを考える

 

 ※この記事は大谷選手の投球を参考動画として、お借りしているだけで、独自の何かを分析したものではありません。

 

では、本題に入ります!

 

まず、こちらの記事でSSC(瞬発力)について書きました。まだ、読まれていない方は瞬発力の解説だけでも、読んで頂いてからの方が分かりやすいかと思います。

記事で紹介した「デコピン」では動きが単調すぎていまいちスポーツ動作と結び付きにくかったと思います。

そこで今回は「野球の投球動作」に置き換えて考えてみます。

 

 

大谷選手の投球からSSCを考える

同世代ということもあり、大谷翔平選手の動画をお借りしています。

投球動作の中で起こっているSSCを1つ1つ見ていくのは、複雑すぎる。そして、僕も読者の方の飽きてくると思うので、今回は投げている腕(大胸筋から手まで)のコックアップ時からざっくり4つに分解したポイントに限定して簡単に考えていきます。

結んである◯は関節の位置(肩・肘・手)と骨の位置で、赤く塗られている部位は伸張している筋肉・腱になっています。※ブレがあるので、目安程度に...

 

f:id:ryo_72:20180730004320p:plain
f:id:ryo_72:20180730004436p:plain

①コックアップⅠ

体幹部が下肢の力で高速で前に向く → 腕全体が慣性で体幹から取り残される → 胸部の筋肉が強制伸張(大胸筋など)

②コックアップⅡ

伸ばされた胸部(大胸筋など)の力で上腕骨が前に出る → 前腕が慣性で取り残される → 上腕の筋肉が強制伸張(上腕三頭筋など)

 

f:id:ryo_72:20180730004415p:plain
f:id:ryo_72:20180730004354p:plain

③加速

上腕(上腕三頭筋など)の力で前腕が前に出る → 手が慣性で取り残される → 前腕の筋肉が強制伸張

④リリース

前腕の力で手が前に出る → ボールが高速で飛んでいく

 

SSCは「せーの!」と同時に起きるのではなく、伝達して動作します。

今回は、肩周辺からリリースする手までだけ、取り上げましたが、投球動作では【脚 → 骨盤 → 体幹部 → 肩 → 肘 → 手首】の順に体幹部から体の先端部へ遅れて動作していきますPDS:近位遠位連鎖)。

実際に投球動作を筋電図で見るともっと細かな筋肉が様々なタイミングで活動しています。ただ「発揮する力は、筋の横断面積に依存すること」「近位から遠位にSSCが伝達されること」に変わりありませんので、ざっくりとシンプルに捉えてもらえればと思います。

 

以上、投球動作のSSCについてでした。

 

イメージと実際の動作にはギャップがある 

ついでと言ってはなんですが、投球動作に関する記事をこの後いつ書くか分からないので、「ボールは脚で投げている件」と「投球では、ほとんど腕を振っていない件」の2つを紹介して終わりたいと思います。 

ボールは脚で投げている件

先ほど、下半身からSSCが伝達してボールを投げています。と話しましたが、実は投球動作のように、上半身を大きくスイングするような動きでは、2/3が体幹・下半身のSSCによることが明らかになっています。

ボールを持つ腕の運動エネルギーは、脚で地面を蹴って骨盤を回すことから生まれています。その骨盤の回転は、3つのポイントに分解できます。 

 

f:id:ryo_72:20180730222059p:plain
f:id:ryo_72:20180730222107p:plain
f:id:ryo_72:20180730222116p:plain

①軸脚の蹴り

軸脚による蹴り出しからスタートし、骨盤を左回転させながら前方に押し出します。

②踏み込み脚のブレーキ

踏み込んだ脚でブレーキをかけることで、骨盤にかかかる左回転が強くなります。この左足の作用は「壁」と呼ばれており、よく指導されるポイントだと思います。

③踏み込んだ脚の内股を締める

さらに着地した踏み込み脚の内股を締めることで、さらに左回転が強調されます。

この③の動作については、言及されることが少ないと思いますが、投球する上で最後に骨盤の回転力を強調する重要な動作になります。この内股を締める動作を練習する際には「真下投げ」や「前脚の片足立ちのまま投げること」で、意識しやすくなります。

 

腕の動きに目が行きやすいところですが、動画などを撮って、脚の細かな動作を見直してみると新たな気づきがあるかもしれません。

  

投球では、ほとんど腕を振っていない件

野球中継などの実況でよく言われる「腕がよく振れていますね!」という言葉。

確かに空間的には、腕を振って投げているように見えますが、厳密に言えば、腕を振る動きは、実はあまり大きくないんです。

体幹が大きく回転しているので、その先端である手が大きく振られているように見えるだけで、腕を振る動作である肩関節の動作(水平内転)だけ見ると、30度程度しか動いていません。

例外)内野手のように捕球してから送球までの時間が短い場合、体幹の回転が投手に比べて小さいので、腕の振りは大きくなります。

 

f:id:ryo_72:20180730222801p:plain

この大谷選手の画像でも、手のひらがこちらを向くほど、腕を内側にひねっています。

通常、胸を強く張ったとき(画像:コックアップⅠ)からリリースまでの60度ほどの範囲で、腕を高速で内側にひねっています。

このような腕を内側にひねる動き(肩関節内旋)は、腕を振る動き(肩関節水平内転)の仕事量を超えていることが明らかになっています。(Feltner,dapena,1986)

 

SSCと実際の動作から考える「投球のポイント」

いくつかポイントが出てきたのでまとめて紹介しておきます。

① 地面を強く蹴る

② コックアップ時に軽く腕を外にひねる(肩関節外旋)

③ 踏み込み脚でブレーキをかける

体幹を強く速く回す

⑤ 踏み込んだ脚の内股を締める

⑥ リリース直前で腕を内側にひねる動きを強調する

⑦ 遠位は脱力し、近位の筋肉から力を伝えるように手足を振り回す。

⑧ 腕を一気に内側にひねる

 

まとめたつもりがポイントが多くなってしまいました...あくまでポイントですが、無意識にこれができていると理想的です。

 

「フォームが綺麗なら怪我しない」という嘘

── 「フォームが綺麗なら怪我しない」

よく使われるこの言葉。根性論なのか本当に信じているのかは分かりませんが、この考え方はほとんどの方に当てはまりません。

どこから発揮された力かに関わらず、関節にかかる負荷は一緒です。また、球速に比例して、負荷は大きくなります。競技力の高い選手ほど、怪我のリスクも高くなるのです。また、投球時に負担がかかりやすい、内側側副靭帯などは筋肉で守ることはできません。

甲子園が始まる時期になると毎回議論されていますが、優秀な選手を守るためにも、投球制限や試合間の調整が最も重要になります。

 

まとめ

SSCの話から脱線して、投球動作の話をいくつかしてみましたが、思いの外長くなってしまいました。

今回ここで書かれている内容は、実際に野球をやっている方も無意識に行っている方がほとんどだと思います。主観的な感覚も大事ですが、実際の動作と合わせてみると練習の精度はさらに上がっていくので、お試しください。

何か一つでも参考になる部分があると嬉しいです。