「瞬発力(SSC)」をデコピンで解説

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どうして自分にはできないんだ、という体験は皆様にもあったと思います。

僕が初めて無力を感じたのは小学生のときにやっていた陸上競技でした。当時は、もう手を尽くし切ったと思っていたことが、トレーナーの勉強を始めて明確な間違いが見つかりました。

 

そのキーワードが ”瞬発力(SSC)” です。

 

現在、競技に躓いている方から今後スポーツを始めようとしている方へ、簡単に瞬発力を紐解きながら、重要性を考えていきます。

 

 

 

競技力を支える ”SSC”の力

 

この”SSC”は「Stretch Shortening Cycle」の略で、馴染みのある言葉で言えば「瞬発力」です。

 

「瞬発力」と聞いても何をどう鍛えたらいいのか、いまいち想像できない方が多いのではないでしょうか。何かと多用する言葉の割にトレーニング方法も力の実態も部活レベルでは、説明されることがかなり少ないように思います。

そこで、最初に「SSC=瞬発力」について解説してみます。

 

SSC(瞬発力)は何の力なのか

よくアスリートに対して「バネがある」と表現されることがあります。見た目のイメージから、このフレーズを使っているだけだと思いますが、この表現、あながち間違いではなく。

実際に、僕たちの体にはバネとなる器官が存在します。

それが腱組織です。一番よく聞くのは”アキレス腱”だと思います。

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この腱という組織は、筋肉と骨の間をつなぐことで、筋肉の力を骨に伝える役割を果たしています。これはよく知られていると思いますが、腱にはもう1つの特徴があります。

「腱は、硬いゴムのように弾性を持ち、バネのように伸び縮みできる性質を持っている。」

これがバネの正体です。この腱が持つ弾性を利用することで、筋力以上のパフォーマンスを発揮することができます。

 

「デコピン」でSSCを解説!

スポーツ動作で細かく解説できればいいのですが、今回は分かりやすく「デコピン」で腱の弾性とそのエネルギーについて見てみましょう。

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① 弾性エネルギーを充電

人差し指を親指で押さえることで、前腕から指にかけて走る筋・腱が強制的に伸張されます。この親指の作用でパワーを充電することができるのです。(分かりやすく赤く囲んでいますが、実際はもっと広範囲の筋肉や腱で伸張が起きています。)

 

② 筋収縮と同時に中指が高速で飛ぶ!

人差し指から親指を離すと、筋収縮が起こるタイミングでパワーが放出され、中指が高速で飛んでいきます。

 

実際にデコピンを親指なしでやってみてください。痛みが出るような力は発揮できないはずです。つまり「デコピンが痛い人」は、このSSC(瞬発力)が上手い人ということも言えます。

ただし、動作ごとに練習が必要なので、これで瞬発系の素質が分かるという指標にはなりません。

どの動作においても【強制伸張によって弾性エネルギーを充電 → 筋収縮と同時にエネルギー放出】という一連の流れは、変わりません。

これがSSC(瞬発力)の正体です。

 

とはいえ、「デコピン」では動きが単調すぎていまいちスポーツ動作と結び付きにくいと思いますので、別記事で野球の投球動作(大胸筋から前腕まで)に置き換えて考えいますので、気になる方はこちらへ。

  

SSC(瞬発力)を鍛えるトレーニングとは

SSCは、誰でも上手くなれます。ただ、筋トレでは上手くならないんです...筋肉を大きくするのとは別にトレーニングが必要です。一般的によく行われるのは”プライオメトリクス”というトレーニングです。

このプラオメトリクスは「反動を使った動作を反復して行うトレーニング」で、筋トレとは動作が全く異なります。

この動画に出てきている種目以外にも様々なトレーニングがあるので、競技や目的に合うものを探してみてください。

 

SSCのコツと注意点

SSC(瞬発力)を上手く利用するにはいくつかのポイントがあります。それぞれの競技特異性を含めて考える必要があるため、あくまでポイントとして3つだけ紹介します。

 

① できるだけ脱力する

脱力すると筋肉が強制伸張されやすくなるため、SSCが使いやすくなります。

 

② 腰を回す(上半身をスイングするような動作の場合)

腰を回す、腹部を動かすことで下肢からのSSCが伝達しやすくなるため、上半身をスイングするような動作ではポイントとなります。

 

③ 筋肉は大きい方がいい

SSCがかかっているときは、筋への力学的負荷が非常に大きくなるため、強い力発揮が必要となります。筋肉が大きい方が強くSSCがかかり、有利と言えます。

また、扱う対象物が重いほど筋肉の大きさが必要になります。(砲丸>円盤>やり投げ>野球ボール)

 

その他にも種目によってポイントが分かれるので、無駄に数をこなすのではなく、それぞれのポイントを意識しながら行いましょう。自分の動きを動画を撮ってみると習得が速くなります。

 

◯ SSC・プライオメトリクスの注意点

SSCのトレーニングで行うプライオメトリクスは反動を強く利用するため、筋肉が伸張される際に力学的負荷がかなり大きくかかります。と同時に怪我のリスクも高くなります。くれぐれも強度は段階的に上げていきましょう。

また、成長期の子供は、成長軟骨の障害につながる場合があるので、もし動作の練習として一時的に行う際は、強度や回数に注意して行いましょう。(【相談の回答】成長期の子供に効果的な筋トレってあるの? - とれはぶ.com) 

 

”SSC”と”伸張反射”は全く別物

 よく「伸張反射を利用して」と言われることが、瞬発力として筋力発揮をしている仕組みはSSCの貢献度が高く、伸張反射とは一線を画します。

・伸張反射…筋が急速に伸ばされると収縮する反応のこと。

日常生活の中では、居眠りをしていて「カクッと落ちた首が戻る」や「段差に驚いたときに倒れないように動きを止める」ような危機管理的な貢献度が高い反射です。

この反射は、とにかく速く。とても弱い。

段差に驚いたときに反射が起きて、ジャンプしてる人なんて見たことないですよね。体が怪我をしない程度のパワーしか出ないため、SSCの貢献度はかなり低くなっています。

SSCの練習をする上で、この辺の名前は重要ではありませんが、参考までに。

 

まとめ

今回は、瞬発力を簡単に解説してみました。筋肉量も競技力に重要なファクターですが、筋肉と同じように瞬発力もトレーニングで成長させることができます。

専門競技に置き換えてトレーニングをすることで、必ず競技力に繋がります。

 

もっと詳しく知りたい方はこちらもぜひ。

大谷翔平選手の投球動作から”SSC”(瞬発力)と投球のポイントを考える - とれはぶ.com